研究概要 |
平成19年から同20年にかけて、佐世保市歯科医師会員が経営する131の歯科診療所、および2つの病院歯科にて、口腔外傷発生動向調査を実施した。調査結果から、口腔外傷の受傷場所として「自宅(屋内)」と「保育園・幼稚園」との回答が多かったため、最終年度である平成22年度は、佐世保市幼児教育センターと共同して、市内保育園・幼稚園に勤務する保育士・教諭を対象とした外傷予防に関する研修会を行った。佐世保市医師会、同市歯科医師会、産業技術総合研究所、および日本公園施設業協会の協力を得て計4回の研修会を実施し、のべ367名の参加を得た。口腔外傷に関する研修会の際にアンケート調査を実施したところ、参加者の75%が「口腔外傷について関心がある」と回答しており、78%が「業務に反映できる」と回答していた。園内では、口腔外傷が少なからず発生しているにも関わらず、その対応法については、研修会等で学ぶ機会が少なく、現場での不安は大きかったものと考えられた。口腔領域の事故予防とその対応に関する研修会の定期的な開催が必要であると考えられた。佐世保市での取り組みの紹介と研修会の効果については、第3回日本セーフプロモーション学会(十和田市)にて発表した。 平成22年度は、前述した研修会の開催に加え、佐世保市内の全118の保育園・幼稚園を対象とした過去1年間に発生した事故に関するアンケート調査を実施し80施設から回答を得た(回答率68%)。その結果、市内保育園・幼稚園では、1年間で1,000園児あたり58の通院を要する外傷が報告されており、うち12が口腔と関連した外傷であった。口腔と関連した外傷(経過観察も含む)の受傷理由は、「遊んでいて転んだ」が最も多く48例(40%)であった。また、外傷の種類は、「唇を切った」が最も多く64例(46%)、ついで「口の中を切った」30例(25%)、「歯がぐらぐらした」28例(24%)であった。アンケート調査の結果は、佐世保市幼児教育センターを通じて広報するとともに、今後の園での事故予防についての基礎資料とした。
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