昨年(平成20年度)の実績報告書には経済不況が続いているにもかかわらず、沖縄県の自殺者は平成18年の400人から平成19年347人、平成20年337人と減少しつつあると報告した。 ところが平成21年度に入ると様相が一変した。年度当初の1月から前年度同月をはるかに上回る自殺者が続き、8月までの年度途中で県内自殺者は298人に及び、21年度年度末にはついに過去最多の406人という自殺者を記録した。ようやく軌道に乗りかけたかにみえた県内の自殺者対策であったが、全国および類似県でもそうであったようにリーマンショックによる世界同時不況という未曾有の経済危機は、国内および県内における様々なレベルの自殺対策を一挙に吹き飛ばしてしまった感がある。平成18年以来ようやく減少に転じるかに見えた沖縄県内中高年男性の自殺もここにきて再び足踏み状態に入った。 以上のような県内における危機的状況に対処するため、21年度年度途中からは急遽国の「地域自殺対策緊急強化基金」の支援も得て、(1)対面型相談支援事業、(2)電話相談支援事業、(3)人材養成事業、(4)普及啓発事業とりわけ中高年男性にターゲットを絞った"睡眠キャンペーン"等の強化に取り組んだ。21年度年度末にかけてはさらに県内離島の宮古・石垣地区の対策を強化ずべく奔走した。石垣市ではたまたま遭遇した中学生の自殺ケースに対して学校や関係者への緊急支援も行った。 上に述べたような状況から、県内でこれまで行ってきた様々なレベルの介入実践や各種の自殺対策については今後、改めて検証し直さなければならないと考えている。 さて、科研助成による当プロジェクトは今年度で最終年度になった。これまでの活動成果についてはその評価と課題について、とりあえず第41回沖縄県公衆衛生学会(平成21年11月、那覇市)と、第29回日本社会精神医学会(平成22年2月、松江市)で学会報告を行った。
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