研究概要 |
血清アディポネクチンレベル、また血清成分を指標とした長鎖n-3多価不飽和脂肪酸の摂取が乳がんリスク低下と関係するか否かを検討するため、文部科学省の助成による大規模コホート研究(JACC Study)においてコホート内症例対照研究を実施している。JACC Studyでは1988-1990年のベースライン調査において、40-79歳の男女約39,000名(うち女性約25,000名)から血清の提供を受け-80℃にて保存している。 血清アディポネクチンと乳がんリスクとの関連に関するコホート内症例対照研究では、罹患は2001年まで、死亡は2003年までの追跡調査で同定された女性乳がん症例のうち、保存血清のある91例(罹患調査地区に限定)を症例とした。対照は症例と性、年齢(可能な限り近く)、施設を一致させ、症例1例に対し約3例(2-4例)、合計269例を選択した。症例と対照の保存血清について、高分子アディポネクチン濃度を測定した。 高分子アディポネクチン濃度の第1(最低)三分位に対する、第2、3三分位の多変量調整オッズ比はそれぞれ1.32(95%信頼区間 0.93-1.87),1.09(同 0.76-1.57)(trend P=0.72)で、血清アディポネクチンレベルと乳がんリスクとの間には明らかな関連は認めなかった。閉経後(ベースライン調査時)女性では最高三分位の多変量調整オッズ比が0.46と、血清高分子アディポネクチン濃度が高い場合にオッズ比が低下する傾向を示した点は既報と一致したが、95%信頼区間は0.14-1.56(trend P=0.21)で有意な関連までは認められなかった。 血清脂肪酸と乳がんリスクとの関連に関するコホート内症例対照研究については、保存血清の脂肪酸分画を測定中であり、これまでに約3割の測定を終了した。
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