昭和60年〜平成16年の期間の都道府県別自殺者数のデータを厚生労働省保管統計より得て、ベイズ型Age-period-cohort分析を行うため、プログラム(BAMP)のアルゴリズムについて検討した後、分析を行い、自殺動向に及ぼした年齢、時代およびコホートの影響について分離して推定した。その結果、年齢効里については加齢に伴った自殺リスクの増大傾向が男女に共通して認められたが、40歳代から60歳代前半にかけての特異的な自殺リスクの高まりが男性において顕著に把握された。時代効果は、1998年に急激なリスク増加が男女に共通して認められ、以降も高いリスク水準を維持する傾向が男性で顕著であった。女性では1998年以降は低減傾向にあった。コホート効果は、男性では1926年生まれ以降のコホートで自殺リスクの増大傾向が認められたが、女性では1956年生まれのコホートまでは自殺リスクの低減が認められ、以降のコホートで増大傾向に転じていた。本研究の結果、1998年以降の自殺増大期を含む近年のわが国の自殺動向に対して、年齢的には男女ともに加齢に伴った自殺リスクの増大に加えて、とくに中高年男性の自殺リスクが高いことが示された。また時代的には経済不況の深刻化した1998年を契機とした急激な自殺リスクの増大が認められ、その影響は男性では以降も継続傾向にあることが示された。さらに、コホート効果として、男性での自殺リスクは1926年生まれ以降のコホートにおいて、1944年、1961年、1981年の僅かなピークを含め一貫した増大トレンドを示していたのに対して、女性では1926年以降1956年生まれのコホートまでは自殺リスクが低減しており、以降のコホートで増大するという男女で異なるコホート効果が認められた。
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