昨年度実施した昭和60年〜平成16年の期間の都道府県別自殺者数のデータを使用したベイズ型Age-Period-Cohort分析の結果について、47都道府県の年齢効果、時代効果、コホート効果の各効果のトレンドの変化パターンを正規化して、クラスター分析(Ward法)を使用して地域の類型化を行った。 その結果、男性の年齢効果のトレンド変化は4パターン、時代効果は5パターン、コホート効果は2パターンの類型に分類された。いずれも東京とその周辺県(神奈川、千葉、埼玉)等の大都市圏域が含まれる類型が抽出され、自殺に対する年齢、時代、コホート効果のリスク変動のパターンにおいて、大都市圏域を含む都道府県の特異性が明らかにされた。大都市圏域を含むこの類型の特徴は、50歳台の年齢効果の上昇と70歳台からの低減から増大へのトレンド転換、1990年代前半までの緩慢な低減から1998年の急激な増大トレンドへの転換を特徴とした時代効果、さらには1925年生まれを変曲点として増大トレンドに転じ、1939年生まれから横ばい状態を示すコホート効果の特徴が把握された。一方、女性の場合には、年齢効果、コホート効果に関して、47都道府県の変化パターンは共通しており、複数の類型に分類できる特徴は示されなかったが、男性と同様に1998年の急激な増大トレンドへの転換を示す時代特徴が大都市圏域を含む都道府県の地域特徴として認められた。 本年度は、さらに新たに入手した平成17年の都道府県別自殺者数のデータを追加することで、これらのデータセットを対象とした同様のベイズ型APC分析を行ったが、分析結果に大きな差異を認めなかった。その原因のひとつとして1985年の戦後2回目の自殺ピークの影響を受けていることが考えられたことから、1998年以降の急激な年齢効果の増大を特徴とした近年の自殺動向の構造に限定した分析を行う目的から、解析の期間を1994年以降から最新年のデータまでを含めたAPC分析を行うことを企画して、その目的のためのプログラ改変作業と、地域特性のGISによる地図上での視覚化を行うための検討を行った。
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