本研究では、平成19年度から3ヵ年計画で、島嶼県沖縄の保健看護職者におけるインターネット上の"学びの場"を構築するために、1)専門職として磨いてきた知識・技術、2)看護活動の質改善に必要な能力開発、3)ファシリテーション環境の必要性などについて明らかにする。 平成21年度は、試行的に用意したファシリテーション環境の実際的な課題を明確にするために、看護現場との協働を実践した。第一は、県内A病院の看護師4グループ(1グループ3~5人)において、約8カ月間を通して、「看護研究の計画から研究発表まで」を実施した。実際に面談協議するだけでなく、1共有メールアドレスを用いた意見交換を実施した。結果的に求められた点は、研究題名の決め方、研究目的の絞り込み方、文献の検索法、図表の作り方、統計手法の選択、目的と結果と結論の一貫性、などであった。 第二は離島Bにおいて、看護職者を対象にICTに関する遠隔セミナーを2回実施した(10人、14人の参加者24人)。その際、インターネット電話サービスSKYPEや、本大学の遠隔教育システムのデモンストレーションなどが求められた。第三として離島Cでは、看護職者10人に対する文献検索セミナーを実施し、後日出てきた疑問点に関連して、有用ウェブサイトの情報提供や簡易マニュアルの作成を行った。 これら参加者の多くがICTは初体験で始まったが、看護専門職者として科学的な根拠に基づく判断と問題解決の能力を磨き続けたいという学習ニーズがそれぞれ表出されていた。すなわち、今回のように個別対応的で継続的な環境を構築することの実際的な価値が示唆される。今後、看護職者間で自助的、共助的なファシリテーション環境を促進するには、自由にアクセス可能なICT環境を大学等の生涯教育機関が継続的に準備する必要がある。
|