【目的】女性における飲酒と動脈硬化のリスク要因との関係について検討した。【方法】職場での定期健診受診者(20〜39歳の健常男女計7887人)のデータを用いた。一日あたりの平均飲酒量により、対象者を非飲酒群、少量飲酒群(一日当たり15g未満)、多量飲酒群(一日当たり15g以上)の3群に分類した。血圧、血中脂質(総コレステロール、HDLコレステロール、動脈硬化指数)、BMIなどの動脈硬化リスク要因と飲酒との関連性について年齢、喫煙歴などを調整して検討した。動脈硬化指数は総コレステロールとHDLコレステロールの差をHDLコレステロールで除して算出した。【成績】対象者全体では収縮期および拡張期血圧にはいずれも非飲酒、少量飲酒、多量飲酒の3群間で有意な差はなかった。一方、少量および多量飲酒群では非飲酒群に比べて総コレステロールと動脈硬化指数は有意に低く、HDLコレステロールは有意に高かった。動脈硬化指数により対象者を3分位に分類すると、動脈硬化指数の最低3分位群では収縮期および拡張期血圧は多量飲酒群において非飲酒群に比べて有意に高かったが、動脈硬化指数の最高3分位群では収縮期および拡張期血圧には非飲酒、少量飲酒、多量飲酒の3群間で有意な差はなかった。動脈硬化指数の最高3分位群では、中間および最低3分位群に比べて収縮期および拡張期血圧は有意に高く、この傾向は非飲酒、少量飲酒、多量飲酒のいずれの群でもみられた。【結語】女性において飲酒による血圧上昇作用は動脈硬化指数と関連し、動脈硬化指数が低い群においてのみ飲酒による昇圧作用が観察された。飲酒により動脈硬化指数が低下することから、飲酒に対する感受性が高い女性においてのみ飲酒により血圧が上昇すると考えられる。このように動脈硬化予防の見地から女性おける飲酒の是非には飲酒に対する感受性を十分に考慮する必要があることが示唆された。
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