習慣性飲酒により脂質代謝は改善される一方、血圧は上昇する。女性において飲酒の脂質代謝への影響が大きい対象者群では血圧への影響も大きく、これらの作用の程度は各個人でのアルコール感受性によることが示唆された。飲酒の血圧および血中脂質への影響について検討したところ、女性では飲酒による血圧上昇作用が弱い一方、LDL低下作用およびHDL上昇作用は女性でより強かった。これらの結果は男女で飲酒量を調整した群を用いた分析でも変わらなかった。喫煙歴は飲酒と血圧および血中脂質との関係に交絡したが、この交絡作用には男女間で差は見られなかった。したがって男性に比較して女性では飲酒による抗動脈硬化作用がより顕著に出現する可能性が示唆され、適性飲酒量として男性で推奨されているエタノール換算一日20 - 30 ml (またはg) 以下という基準は女性においても適用可能と考えられる。現在推奨されている女性での適正飲酒量(男性の半分量)について見直す必要がある。
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