研究概要 |
研究初年度,福岡、那覇、福島で各5〜10名の対象者(視覚障害者,盲ろう者,後期高齢者,小中学生を含む)に聞き取りを行い,触知実体マップ法の実施手順を確定した。 1.【対象者が生活や健康を想起内省できるキーワードの選定】生活習慣の特徴づけに関連した言葉は,最低5ワードがあると,意味ある想起が開始されることが確認された。普遍的な5ワードが存在するのではなく,対象者の属性で異なる。沖縄の後期高齢者では,「海に行く」など自然環境との触れあいに関するワードを含める必要性が指摘された。 2.【キーワードを手指の触覚から想起できる触知実体の同定】小中学生の場合,学校生活に関連した触知実体の重要性が指摘され,学校の机上で使う物品の実例が得られた。視覚障害者、盲ろう者では,食事・外出・コミュニケーションに用いる物品の重要性が指摘され,対応する実例が得られた。後期高齢者の場合,特に自然に関連する実態を含めることが重要であった。居住地の自然環境を考慮して,沖縄では貝殻,福島では木の実などを,生活想起の出発点として,確定した。 3.【手指の触覚を頼りに,触知実体群を配置できる触知化座標面の確定】対象者に小型ホワイトボードを渡し,上記で選定した物体(ミニオブジェ)を,触覚を頼りにボード上に自由に配置してもらう試行を続け,最適な座標面の検討を行った。当初は,A4大のボード上に,縦横の触知線を配置するデザインが有力視された。その後,小学生や後期高齢者での試行から,A4大のボードでは,視覚を遮った状態での配列作業に際し,「ボード面大きすぎ,分かりにくい」との発言が得られた。試行錯誤の結果,検討した中では最も小型のボード(A5)が分かりやすく,またこのサイズであれば,あえて触知線を設置しなくても,物体の配置が円滑に進むこと,が確認された。 4.上記の知見をまとめ,触知マップ作成の手順を確定し,文書化した。
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