背景・目的:睡眠時無呼吸症候群は、交通事故、労働災害などを引き起こす危険性のある疾患であるが、一般住民を対象とした睡眠時無呼吸症候群の研究は国内ではほとんどない。さらに、睡眠時無呼吸患者では早朝高血圧、血小板凝集能も上昇するなど脳梗塞を発症しやすい状態にあるといわれているが、一般住民を対象とした研究は今まで我が国でほとんど報告されていない。そこで今回、都市部一般住民において睡眠呼吸障害の頻度を明らかにした上で、睡眠呼吸障害と家庭血圧、止血凝固能などの循環器疾患との関連について検討し、睡眠呼吸障害の高リスク者への循環器疾患予防のための具体的な改善方法を提示することを目的とする。 方法:同意の得られた40-69歳の健診受診者(男性328名、女性461名)を対象とした。パルスオキシメトリー検査(パルスウォッチPMP-200)を自宅で実施して、無呼吸低呼吸回数(3%ODI)をそれぞれ4つのカテゴリー(正常群:0-4.9、軽症群:5.0-14.9、中程度以上群:15.0-)に分類した。 結果:軽症群、中程度群以上はそれぞれ男性で42%、22%、女性で25%、5%であった。正常群を基準に、中程度群以上が有意に高値であったものは、収縮期血圧(性年齢、喫煙、飲酒調整平均の2群間の差6.8mmHg)、拡張期血圧(同4.3mmHg)、Body Mass Index(同4.2kg/m^2)、腹囲(同11.2cm)、空腹時血糖(同13.4mg/dL)、HbA1c(同0.35%)、インスリン(同3.3μU/mL)、HOMA-IR(同1.2)、高感度CRP(同0.02mg/dL)、IL6(同3.4pg/mL)、BNP(同15.7pg/mL)であった。また、メタボリフクシンドロームの構成因子数は、中程度以上群で有意に高かった。 結論:都市部一般住民の睡眠時呼吸障害の疑いのある割合は、男性で20%、女性で5%認められた。睡眠時呼吸障害は、血圧上昇、動脈硬化、炎症反応、肥満、メタボリックシンドロームと関連性が認められ、睡眠時呼吸障害を有している者に対して早期発見することが、動脈硬化、高血圧の予防につながりうると考えられた。
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