研究概要 |
本研究の目的は異状死体の検案時に画像診断を行うことで解剖適応のない異状死に対しより正確な死因診断を行うこと,また本来正式に解剖すべき犯罪に関連する外因死を見逃さないことの2つの利点をCTを撮影することにより証明することである。本学法医解剖棟に設置した遺体専用のCTを用いてより多くの検案例で撮影を行い,外表所見のみで得られだ死因とCT画像で得られた死因との比較、検討を行うことでその有用性を示し,ひいては今後異状死体の検案に恒常的にCTを導入する方向に導いて行くことである。尚,本研究は千葉大学大学院医学研究院の倫理委員会の承認を得ている。これに沿って本研究ほ千葉県警察本部並びに千葉県警察医会の協力の下に平成19年7月1日より行った。検視にて事件性がないと判断され,死体検案時外表に損傷がない例,或いは損傷が軽度で外表所見のみでは死因の判定が難しい例を対象とし,本大学の法医解剖棟に遺体を搬送,全身を撮影し,画像を読影の上死因を診断,検案時の所見と比較した。その結果平成20年3月31日までに31例のCT検案を行い,その結果死因を特定できたものは9例で,それぞれ大動脈瘤破裂3例,外傷死2例,脳梗塞1例,クモ膜下出血1例,脳内出血1例,膿胸1例であった。不明であったが死因を示唆する何らかの疑わしい所見があったものは9例,死因を推定する所見がCTでは得られなかったものは13例であった。このうち上記の外傷死2例の計4例は司法解剖を行った。千葉県では異状死体の97%近くが外表所見のみで死因を判断されている現状において,31例中18例で死因を特定或いは推定できたことは検案時にCTを撮影することが有用な手段であることを示しており,今後より多くの事例を施行し,検討する価値があると判断できる。
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