研究課題
本研究の目的は異状死体の検案時に画像診断を行うことで解剖適応のない異状死に対しより正確な死因診断を行うこと、また本来正式に解剖すべき犯罪に関連する外因死を見逃さないことの2つの利点をCTを撮影することにより証明することである。本学法医解剖棟に設置した遺体専用のCTを用いてより多くの検案例で撮影を行い、死因の診断を行うことでその有用性を示し、ひいては今後異状死体の検案に恒常的にCTを導入する方向に導いて行くことである。尚、本研究は千葉大学大学院医学研究院の倫理委員会の承認を得ている。また千葉県警察本部並びに千葉県警察医会の協力を得ている。一昨年及び昨年報告した平成19・20年度までのCT検案事例54例は結果をまとめた上で論文として発表した(後述)。これと並行して更に今年度は12例のCT検案を行い、2例で死因を診断することができた。いずれもクモ膜下出血であり、その他1例で死因を確定できないが、腸閉塞が疑われた事例があった。以上の結果より、解剖適応のない異状死例にCTを行うことは、死因を判断するのに全例には程遠かったがある一定の成果が挙げられたといえる。尚、これらの所見を基に千葉県より、死因判断の必要がある異状死例に対して県主導で千葉大学法医学教室にCT検案を依頼するシステムが施行されることが正式に決定した。以上より、本研究は様々な分野からその不備が指摘される現在の死因究明制度を改善するための重要な社会的意義を有した研究であったと結論付けられる。
すべて 2009
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法医学の実際と研究 52
ページ: 89-96