本研究では、研究代表者らが検討している独自の技術である“誘導体化-固相マイクロ抽出法"を活用し、1cmの毛髪(頭髪、腋毛、陰毛など)1本から覚せい剤および合成麻薬を高感度かつ正確に検出し、薬物の使用履歴を把握して犯罪関与の未然防止に資することを目的とする。 本年度は、誘導体化-固相マイクロ抽出法を使用したアンフェタミンの高感度化を目的にポリジメチルシロキサン(100μm、PDMS)ファイバー以外の抽出相について検討した。検討には、ポリアクリレート(85μ、PA)、ポリジメチルシロキサン/ジビニルベンゼン(65μm、PDMS/DVB)、カーボワックス/ジビニルベンゼン(65μm、Carbowax/DVB)の3種類を用いた。アンフェタミンの回収率(絶対回収量)は、PDMS/DVB>PA>Carbowax/DVBの順で上昇した。しかし、バックグラウンドも上昇したため、S/N(シグナル/ノイズ比)を考慮すると高感度化は困難であった。 次に、合成麻薬MDMA、 MDAや麻酔薬ケタミンについて検討した。塩化ギ酸プロピルを用いた誘導体化-固相マイクロ抽出法で行った。覚せい剤類は、70℃で加温することにより、気相中からSPMEファイバーに抽出可能であったが、MDMA、 MDA、ケタミンは70℃では不十分であり、90℃程度まで温度を上昇させる必要があった。ケタミンは、塩化ギ酸プロピルによる誘導体化を行わなくとも検出できたが、ケタミンを特定するフラグメンテーションは、誘導体化した場合の方が明瞭であった。本法により、0.05ng/hairまで検出できるようになり、既報と比べても遜色ない方法が確立できた。 以上の結果を踏まえ、来年度は全自動化実施の耐久性について検討すると共に、薬物の摂取時期を特定し、使用履歴に反映できるかについて検討する。
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