本年度はアンフェタミンの検出感度の向上のため分析法に改良を加え、内部標準物質として非重水素置換体が代用可能かを検討した。 1. 分析法の改良 検査試料中のメタンフェタミン(MA)とアンフェタミン(AM)を効率よく気化させ、ファイバー上に効率良く捕集するために、塩析効果(塩の種類、濃度、温度等)を検討した。これまでの成績で、MAに比べてAMの抽出効率が芳しくなかったので、特にAMについて検討したが、有意な検出感度の上昇を得ることはできなかった。これまで検討した水酸化ナトリウム濃度、70℃による加温条件でファイバーはPDMSを使用する方法が良好であることが認められた。 2. 検査法の再現性 分析に使用する毛髪の溶解に用いるアルカリ濃度および温度、ファイバーの種類、固相マイクロ抽出時の加温等、最適条件における分析は、AMの低濃度域を除いてばらつきは小さく、50pg/hair(1cm、1本)まで充分に検出可能であった。 3. 内部標準物質の再検討 内部標準物質として重水素ラベル化体であるメタンフェタミン(d5-MA)を使用しているが、本法を普及させるためにはd5-MAの入手が必須である。現在のところ入手は非常に困難であるので、比較的入手が可能な試薬(N-メチルフェネチルアミン等)を内部標準物質として代用することを検討した。しかし、覚せい剤類とこれらの試薬では、抽出効率やリテンションタイム、フラグメントイオン等の違いから、高感度で精度良い分析することができないことがわかった。
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