研究概要 |
平成19年度における研究の結果,当初の目的のジアルキルリン酸化合物6種(ジメチルリン酸,ジメチルチオリン酸,ジメチルジチオリン酸,ジエチルリン酸,ジエチルジチオリン酸,ジエチルジチオリン酸)のキャピラリー電気泳動法質量分析法による定量分析法の開発に成功し,平成20年度はこの分析法の実例への応用としてフェニトロチオン中毒の試料を中心に分析を行ってきた. 平成21年度は,マラチオン,マラチオン・フェニトロチオン混合製剤,ピリミホスメチル,メチダチオン,ジクロルボス,ダイアジノンの中毒例について分析を行った.その結果,ジメチルチオフォスフェート型とジメチルジチオフォスフェート型有機リン系農薬中毒例において検出が予想されるジアルキルリン酸に加え,0,S-ジメチルチオフォスフェートが26例中24例から検出された.有機リン系農薬中毒例において代謝物としての0,S-ジメチルチオフォスフェートの検出は報告がなく,今回,世界で始めてその存在が証明された.この結果を踏まえ,0,S-ジメチルチオフォスフェートの定量分析法も確立した. 分析を行った症例について,臨床症状と代謝物であるジアルキルリン酸の濃度との相関性を検討したところ,血清中ジメチルフォスフェート濃度が高濃度になると中毒症状が重症となる傾向があることが明らかとなった.また,有機リン系農薬中毒において詳細にジアルキルリン酸を定量分析することにより,摂取した有機リン系農薬のリン酸のタイプや単独製剤か混合製剤の判別,推測が可能であることが立証できた.
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