本年度は覚せい剤、麻薬、向精神薬及び農薬について、以下の検討を行った。1.分離検出条件の検討=分析対象の標準品について、GC/FID法若しくはGC/NPD法を用いた分離検出条件の設定を行った。分離カラムはSupelco Equity-5あるいはEquity-1が適しており、覚せい剤はメタンフェタミンとアンフェタミン、フェノチアジン系薬物5種類、ベンゾジアゼピン系薬物6種類、三環系抗うつ剤4種類、有機リン系農薬8種類、カーバメート系農薬9種類の分離が可能であった。また、コデイン及びジヒドロコデインの麻薬類はBSTFAによる誘導体化を施すことで分離検出が可能であった。なお、ブチロフェノン系向精神薬は検出感度が低く、さらに検討する予定である。2.GC/質量分析(MS)法によるマススペクトルの解析:覚せい剤、麻薬、ベンゾジアゼピン系薬物及び三環系抗うつ剤については、GC/MS一電子衝撃イオン化法によるマススペクトルの解析を行い、選択イオン検出(SIM)に利用できるイオンを選択した。3.固相抽出(SPE)チップによる抽出法の検討:各種標準品を人体試料(全血、血漿および尿)に添加し、SPEチップによる最適な抽出条件を設定した。チップの前処理はメタノール、蒸留水を用い、人体試料は覚せい剤と三環系抗うつ剤は強アルカリ性、麻薬及び向精神薬は弱アルカリ性、農薬は弱酸性に緩衝液等を用いて調整した。調整試料液の吸引・吐出の回数は概ね20〜25回、蒸留水による洗浄後、メタノールを用いた吸引・吐出により溶出を行った。溶出液は設備備品で購入したオートサンプラーを用いて自動分析に供した。その結果、回収率は全ての対象薬毒物において概ね70%以上を得ることができた。4.研究発表:上記の結果の中から、覚せい剤について研究成果をまとめて外国雑誌に投稿した。
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