本年度は固相抽出(SPE)チップーGC及びGC/MSシステムを利用した麻薬、向精神薬及び農薬分析における定量性及び再現性について検討を行い以下の結果を得た。 1.麻薬 コデイン及びジヒドロコデインを対象として、血漿中の薬物をSPEチップによる抽出後、BSTFAによる誘導体化を施してGC/MS/SIM検出を行った。回収率は80〜85%、検出限界は約5ng/ml、定量限界は20ng/mlであった。 2.向精神薬 三環系薬物(アミトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン、トリミプラミン)、フェノチアジン系薬物(トリフルプロマジン、トリメプラジン、プロマジン、クロルプロマジン、レボメプロマジン)、ベンゾジアゼピン系薬物(メダゼパム、フルジアゼパム、ジアゼパム、フルニトラゼパム、プラゼパム)及びブチロフェノン系薬物(ハロペリドール)を対象として、血漿中の薬物をSPEチップによる抽出後、GC/MS/SIM検出を行った。ブチロフェノン系薬物についてはMSTFAによる誘導体化を施した後にGC/MS/SIM検出を行った。全ての薬物において回収率は75〜99%、検出限界は0.5〜20ng/ml、定量限界は2〜60ng/mlであった。また、日内変動及び日間変動は15%以下であった。さらに、本条件を応用して、三環系薬物アモキサピン経口投与後のヒト血漿から実際に薬物を検出することができた。 3.農薬 有機リン系農薬(MEP、EPN、IBP、イソキサチオン、エチオン)を対象として、血漿及び尿中の各農薬をSPEチップによる抽出を行った後、GC-FID検出を行った。回収率は86〜107%、検出限界は20〜50ng/mlであった。日内変動は8.4%以下、日間変動は9.9%以下であった。 4.研究の総括 本研究ではSPEチップを用いたGC及びGC/MSシステムによるヒト体液試料中薬毒物分析法の詳細を設定することができた。その結果、本システムを用いることで臨床レベル及び中毒レベルの濃度の薬毒物検査が可能であることが示唆された。
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