研究概要 |
入浴中の急死例は35例で、平均年齢は75±11.9歳、男性19例、女性16例。コントロール症例は35例で、平均年齢75.0±13.0歳、男性26例、女性9例であった。各の剖検例の身長、心臓重量、左右心室壁厚、冠状動脈硬化の程度について調査し、肺静脈4本、洞房結節、房室結節について、切り出しを行い、HE染色、アミロイド染色、EVG染色を行い、肺静脈のmyocardial sleeveの有無、各部位のアミロイド沈着、線維化の程度を、0,+1,+2,+3の4段階で客観的に評価、また、左室自由壁の心筋に小梗塞、瘢痕の有無について、鏡見を行い、統計学的検討を行った。Fisher's exact testを行い統計学的有意差も有無を検討した。肺静脈のMyocardial sleeveは全体で276個認められ、入浴中の急死例で138個(98.6%)、コントロール例で136個(97.1%)認められた。各肺静脈のmyocardial sleeveのアミロイド沈着の程度は、左上肺静脈0.68、左下肺静脈0.76,右上肺静脈0.8、右下肺静脈0.9であった。各肺静脈のmyocardial sleeveの線維化の程度は左上肺静脈1.76、左下肺静脈1.9,右上肺静脈1.87、右下肺静脈2.4であった。すべての症例において、洞房結節、房室結節に異常所見は認めなかった。入浴中の急死例では、コントロール症例と比較して左上肺静脈、右上肺静脈、右下肺静脈の線維化の程度が有意差を持って強く、各々、p=0.0079、p=0.047、p=0.026であった。入浴中の急死例の肺静脈のmyocardial sleeveの線維化の程度は、コントロール症例より高度であった。加齢による肺静脈のmyocardial sleeveの筋細胞のアポトーシス、線維化、瘢痕様組織が心臓細動の発生源となる。入浴中の突然死例にて、心房細動の発生が急死の原因となっている可能性が示唆された。
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