研究概要 |
H19-20年度に引き続き,(1)飛行時間型LC-TOF-MSを用いて,ベンゾジアゼピン系薬物の未変化体及び代謝物43種類の精密質量データベースを検討した.この方法では,従来のLC-MSでは同定が困難であった,類似のクロマト溶出挙動を示す同重体を識別できるなど有効であることが確認された.しかしながら,救命救急センター(CCMC)でみられる多剤併用薬物中毒症例の試料には,ベンゾジアゼピン系薬物以外の薬物が多く含まれ,これらの高濃度を示す薬物の影響についても見直すことが重要と思われたので,法中毒学的薬物分析に重要と思われる薬物を追加,合計142種類の精密質量データベースとして拡充した.CCMC収容の多剤併用薬物中毒症例の解析に応用し,精密質量を用いたTOF-MS薬物スクリーニングの有用性を検討した. (2)TOF-MS薬物スクリーニングの有用性を確認したので,Q-TOF装置での測定・解析を試みた.Q-TOF薬物スクリーニングは,精密質量データベースに加えて個々の薬物におけるproductionとMRMクロマトグラムを用いたTARGET ANALYSISが可能であった.精密質量によるNON-TARGET ANALYSISも併せて実施することが可能であり,Q-TOF薬物スクリーニングが有効であることが示唆された.(3)GC/MS用相対定量・迅速一斉分析ソフトウェア(NAGINATA)を用いたベンゾジアゼピンスクリーニングを検討した.calibration rocking databaseを用いたNAGINATAスクリーニングでは10-5000ng/mlの範囲で直線性,回収率,再現性とも良好で,法医中毒学的試料への実用性が確認された.
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