研究概要 |
中毒原因薬物の迅速かつ確実な同定・定量法を確立することは,法中毒学の分野において重要な研究課題の一つである。現在,血中薬物の同定において,もっとも主流な分析法はガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)である。しかし,このGC/MS法では,タンパク質・核酸・多糖類等の生体高分子の除去(前処理)が必要となるため,測定結果がでるまでに数時間を要することもある。そのため,これに替わる新しい迅速分析法の開発が現在求められている。本研究では,中毒原因薬物の同定・定量を,血液の前処理を含め10分以内に実行可能な高速液体クロマトグラフ/質量分析計(HPLC/MS)を用いた超迅速・簡易分析法の確立を目的としている。本年度は,法中毒学分野で重要となる数種薬物について,HPLC/SSI-MSスペクトルの測定を行い,また生体試料の直接注入が可能と予想されるHPLCカラムの検討を行った。具体的には,Waters Oasis HLBシリーズ,昭和電工MSpakシリーズ,資生堂CAPCEL PAKMFシリーズ,メルクLiChrospher 100 Diol,レギスPINKERTON GFFシリーズ等のHPLCカラムについて,固定相の漏出チェック並びにMSへの影響,各種薬物のトラップ率の調査を行い,目的薬物が漏出されることなく,確実にトラップできる充填剤の検索を行った。今後はこれらの結果を元に,バックフラッシュカラムスイッチングシステムの構築を順次行っていく。
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