研究概要 |
本研究は,血液中の中毒原因薬物の同定・定量を数分以内に実行可能な迅速析法の確立を目的としている。本年度もヒト血清試料の直接注入を可能とするバックフラッシュ/カラムスイッチングシステムの再構築と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/質量分析法(MS)の諸条件の再検討を行った。前処理では,ヒトブランク血清50μLにテオフィリン及びカフェイン標準水溶液とIS(3-isobuthyl-1-methylxanthine)を添加し,これに水4,000μLを加え,そのうち400μLをLC/MS分析に供する方法を採用した。カラムスイッチングシステムでは,血清中の生体高分子の排除と薬物の保持をWaters社製Oasis HLBカートリッジカラム(20×2.1mm i.d.)を用いてオンラインで行ない,その後バックフラッシュモードにより目的成分を分析カラム(Merck社製Chromolith Performance RP-18e(100×4.6mm i.d.))へ導入し,薬物の相互分離をする方法を採用した。薬物の検出は質量分析計(日立M-8000)を使用し,イオン化はAPCI法を用いた。本法により,タンパク質の排除とテオフィリン,カフェイン,ISの相互分離を1.8分以内に行うことが可能となった。カフェインの検出限界は0.5μg/mL,定量可能範囲5-60μg/mL(相関係数r^2=0.994)であり,テオフィリンの検出限界は1.0μg/mL,定量可能範囲5-60μg/mL(相関係数r^2=0.986)であった。今回設定した方法では,前処理に要する時間は約1分であり,LC/MSによる測定時間も数分以内であることから,救命救急などの分野においても有効な手法になるものと期待できる。
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