研究概要 |
覚せい剤とストレス:水浸拘束ストレス(WRS)モデルによりストレス性胃内出血に及ぼすメタンフェタミン(MA)の影響を検討した結果,MAが胃粘膜での出血を有意に抑制することが分かった。血中サイトカインでは,とくにIL-6が顕著な増加を示した。RNAの発現を検討したところ,COX-2がMA投与で増加した。しかし,未だMAのストレス性胃粘膜障害の抑制機序については不明である。 グルココルチコイドレセプター(GR)多型とストレス感受性:ストレス条件下では視床下部-下垂体-副腎系が活性化され、グルココルチコイドが副腎皮質から放出されて抗ストレス作用を発揮すると言われている。グルココルチコイドは細胞内でGRと結合し,種々遺伝子の転写制御を行う。そこでICRマウスにみられるGR遺伝子多型(CAG反復配列数により8/8,8/16,16/16に分類できる)とストレス性の胃粘膜障害等に関連があるか否かについて検討した。まずWRSによる胃粘膜の出血には性差が認められ,雄>雌であった。GR多型から検討すると,とくに雄のストレス後期では16/16>8/16>8/8の順で胃粘膜での出血が強いことが分かった。一方,血中コルチコステロンの変化は,ストレス初期すなわち絶食のみでは8/8>8/16>16/16であったが,ストレス後期では逆転し,16/16>8/16>8/8であった。したがって,コルチコステロンは,ストレス初期では障害の抑制,後期では障害の促進に関与するのかも知れない。血中サイトカインでは,IL-6がGR遺伝子多型に関係なく,WRS6時間で顕著な増加を示し,TNFも増加傾向をしめした。またIL-10は8/8,8/16で増加した。したがって,IL6/IL10は,WRS3および6時間で16/16>8/16>8/8であり,胃粘膜で観察される出血程度とよく相関していた。このように,GR遺伝子多型は,ストレス感受性に関与することが分かった。
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