研究概要 |
1.前年度(平成19年度)までに,曝露チャンバー内で麻酔を施した自然呼吸下のラットに酸素(O_2)/二酸化炭素(CO_2)混合ガス(O_221%(一部12.6%)/CO_20〜40%,N_2バランス)を吸入させ,CO_2による致死率,曝露3時間までの血圧・心拍数,曝露3時間後の血清生化学・病理組織学的変化を報告した。 本年度は,呼吸数および動脈血ガス濃度および電解質の変化を明らかにし,さらに二酸化炭素中毒の病態に影響すると考えられる各種阻害剤の作用を検討した。その結果は,以下のとおりである。 2.CO_2群(O_221%/CO_230%)では,呼吸数はCO_2吸入開始直後に一過性に増加したのち直ちに抑制され,血圧は増加した。酸素飽和曲線は右方シフトし,血清KとMgは増加した。対照群では,呼吸数,血圧および血液ガス濃度に著明な変動はなく電解質も正常値であった。 3.炭酸脱水素酵素阻害剤であるアセタゾラミドは,おもに近位尿細管でナトリウムイオンの再吸収を抑制しアシドーシスをもたらす。アセタゾラミドをCO_2群に前投与したところ,CO_2吸入後の血液pHはさらに低下したが,肺の逸脱酵素であるLDH-3の上昇は有意に改善された。 4.MAPキナーゼ(p38-MAPK)は虚血や細菌毒素(LPS)などによりリン酸化され,サイトカイン類の産生を介してショック症状を引き起こすことが知られている。このp38-MAPKリン酸化阻害剤であるFR167653を前投与したが,CO_2群の諸指標の変化に対して有意な影響は認められなかった。 5.内因性一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤であるメチルチオアセチル尿素を前投与したところ,CO_2群の呼吸数の抑制は改善され,肺機能低下の指標となるLDH-3の上昇は抑制された。
|