本研究では、宮城県内の中学生を追跡調査することにより、過敏性腸症候群の有病率とその症状変化を把握し、失感情症や疾病罹患時の親の対応などの因子が及ぼす影響、有症状者が患者に変化する契機を検討する。また、同時に自己効力感(self-efficacy)およびQuality of Life (QOL)の変化も追跡する。さらにトラウマに関する調査を行うことにより、トラウマの種類や受けた時期と症状出現時期を検討し、自己効力感の低さやトラウマ的体験が過敏性腸症候群の発症率を増加させるという仮説を検証する。 昨年度アンケート用紙を返送してきた603人の生徒のうち、有効回答者は591人(男子256人、女子335人)であった。このうち19%に相当する111人(男子41人(16%)、女子70人(21%))が過敏性腸症候群の診断基準を満たした。これらの生徒は腹部症状の全くない生徒(男子194人、女子224人、計418人)に比べて有意に自己効力感やQOLが低下しており、失感情症傾向を認めた。睡眠障害、自覚ストレス、トラウマ的体験も有意に多かった。 591人中追跡調査参加の同意を得られた371人の生徒に対し質問紙を郵送し、219部の回答が得られた。プライバシー保護に厳重な注意を払い、回収されたデータを研究分担者および専門業者が入力し、メモリーに保存した。このデータを研究代表者および分担者が解析を行った。さらに、次年度の調査の準備を行った。
|