研究課題
アメリカ消化器病学会および日本心療内科学会に参加し本研究で得た結果を発表した。過敏性腸症候群(IBS)を含む機能性消化管障害の症状を有する生徒(FBD群)は、腹部症状のない生徒(対照群)に比して疾病罹患時に親から気遣われていないと感じていた。一方、両群の親自身が感じる子供への気遣い度に差はなかった。また、FBD群は対照群よりアレキシサイミア(失感情症)傾向が高く、子供が感じる親の気遣い度はこのアレキシサイミア傾向と負の相関を示した。また、前回回答のあった197名に対し、2回目の追跡調査を施行した。158名(女子103人、男子55人)から回答があり、回収率は80.2%であった。各年度のIBS/FBD/腹部症状のない生徒の割合は、19.6/8.2/72.2%、13.9/7.0/79.1%、19.6/6.3/74.1%であった。このうち3年度ともIBS、FBD、腹部症状がなかった生徒はそれぞれ3.2/0.6/53.8%であり、それ以外の42.4%の生徒は腹部症状が変化していた。ずっと腹部症状がなかった85人を対照群とし、ずっとIBSだった19人(IBS群)と比較すると、IBS群では有意に睡眠障害やストレス・トラウマが多く、自己効力感・健康関連QOLが低下し、アレキシサイミア傾向が高かった。一方、初年度は腹部症状がなく次年度以降でIBSとなったもの19人をIBS進展群として初年度のデータを対照群と比較すると、腹部症状・トラウマやストレスの多さ・自己効力感・アレキシサイミア傾向・健康関連QOLのいずれも差がなかった。さらにIBS進展群で初年度とIBSとなった年度のデータを比較しても同様に差がなかった。思春期の腹部症状は変化しやすく、低年齢での発症やIBS症状が数年に亘って持続することがアレキシサイミア傾向などと影響しあって自己効力感や健康関連QOLの低下につながると推測された。
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