| 研究概要 |
【研究背景】慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界の死亡第3位になるとされる重要な呼吸器疾患であり、酸化ストレスやウイルス感染により急性増悪をおこす。我々は、抗酸化ストレス・抗ウイルス効果を期待しうる薬物として、プロトンポンプ阻害薬ランソプラゾール(LPZ)と喀痰調整薬カルボシステイン(CC)を取り上げ、以下の臨床と基礎の2つの研究を行った。(其々J Am Geriatr SocとRespirologyに掲載決定)
【研究1】LPZによるCOPD患者の急性増悪に対する効果を検討する。COPD患者100名を2群に分け、通常加療群と通常加療+LPZ15mg/日群とした(対照群とLPZ群、各50名ずつ)。1年観察にて感冒回数と急性増悪回数を記録した。両群間で基礎的背景に有意差はなかった。急性増悪頻度は対照群に比してLPZ群が有意に低頻度であった(1.18±0.20回/年vs0.34±0.10回/年, p=0.0003)。ロジスティック回帰分析に依れば、年1回以上の急性増悪をおこすリスクは対照群に比してLPZ群が0.23倍であった(95%IC=0.08-0.62、p=0.004)。LPZがCOPD患者の急性増悪を予防するのに有用であることが示唆された。
【研究2】酸化ストレスによる細胞傷害に対する、CCの保護作用を検討する。培養ヒト気道上皮細胞をCCで前処理後、過酸化水素(H202)で刺激した。アポトーシス解析では、CC処理(1μM、10μM)は無処理に比してアポトーシスを1/1.2、1/1.7に各々抑制した(p<0.05)。ウエスタン解析によれば、CC処理群は対照群に比べAktリン酸化を1.6倍に増加させ、カスパーゼ-9、-3の活性化を各々約1/30、1/2.5に抑えた。これらの結果はCCがAktリン酸化によるカスパーゼ抑制を通じて、酸化ストレス誘導性アポトーシスを抑制する可能性が示唆された。
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