研究概要 |
Helicobacter pylori (HP)と鉄欠乏性貧血(IDA)との関連が明らかとなった。申請者(研究代表者)は、HPのIDA関連遺伝子の解明を目的として、マイクロアレイを用いた遺伝子発現の研究を計画した。まず、研究計画の如く、HP感染小児より対象株の絞込みを行った。IDA群においては、出来るだけヘモグロビン(Hb)値が低い症例とし、結果として、上部消化管に潰瘍を含む出血病変がなく、便鮮血反応陰性の小児(Hb値,6-7g/dl;血清鉄,6-10μg/dl;血清フェリチン,<2μg/dl)の4株を選択した。また、コントロール群としてHP慢性胃炎の小児(Hb値,>13g/dl;血清鉄,>80μg/dl;血清フェリチン,>17μg/dl)の4株を選択した。両群ともに平均年齢は約14歳、男女比は1:1であった。updated Sydney Systemに基づき、胃粘膜生検組織の病理学的検討を行った。各パラメーターについて両群間の比較検討を予定している。マイクロアレイに関しては、選択株を液体培養(log phase)後total RNAを抽出し、電気泳動法により品質が確認された抽出サンプルよりcDNAを合成・抽出した。現在、HP26695株のゲノム情報から作成したcDNAマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーションを行い、mRNA発現を委託解析中である。pfr、feoB、furなどの鉄代謝関連遺伝子や毒性遺伝子を中心に、発現解析を予定している。本研究は、IDAの発症機序だけでなく、HP感染症の病態におけるHP因子の解明に大きく寄与すると期待される。
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