研究概要 |
Heat Shock Protein (HSP)の分子シャペロン機能の第一段階である、細胞内の変性蛋白質を認識して、その蛋白質に極めて短時間で結合するという性質を利用すれば、胃粘膜(細胞)傷害の超急性期に生ずるイニシャルイベントとして傷害を受ける蛋白分子が「HSP不足状態」の時期にはUn-folding状態の蛋白質(HSPと結合していない)として存在するため、HSPアフィニティークロマトグラフィーで変性蛋白質分子を同定し得る可能性があり、ラットに水浸拘束ストレスを負荷することによって、その超急性期(水浸拘束1時間後)、病変完成期(水浸拘束3-5時間後)および負荷前の胃粘膜のホモジネートをそれぞれHSPアフィニティーカラムにアプライしATPで特異的結合蛋白質を溶出した。その結果、超急性期(水浸拘束1時間後)の胃粘膜ホモジネートのみHSPに特異的に結合する分子量200-kDaおよび45-kDaの2種類の蛋白質が溶出された。これら2種類の蛋白質を精製し、そのアミノ酸配列を解析したところ、これらの蛋白質はそれぞれmyosin heavy chain, actinであることが明らかとなった。これまで、胃粘膜傷害のinitiatorやinitialeventは全く不明であったが、約十数秒の間に変性した蛋白質に結合し、高次構造を正常化するHSPの性質を利用することにより、潰瘍治療の標的と成り得る分子を同定できた。本研究で得られた成果は、将来の分子医学的あるいはポストゲノム研究を応用した潰瘍治療の開発に寄与するものと考え報告する。
|