研究概要 |
内視鏡的一括切除を行った大腸腫瘍104症例(LST-G 35例、LST-NG 19例、Polypoid 50例)を対象に臨床病理学的特徴と分子生物学的特徴を検討した。LST-GはLST-NGに比して有意にKRAS活性型変異の頻度が多く(54.3% vs 21.1%,p=0.016),βカテニンの核染色の頻度が少なかった(37.1% vs 68.4%, p=0.027)。この差がLSTの形態差によるのか多変量解析すると、KRAS,βカテニンとも、年齢、性別、LSTの部位、LSTの大きさ、癌組織の有無に統計学的有意差はなく、KRASでは肉眼型(NG/G)でオッズ比0.222、95%CI 0.056-0.883、βカテニンでは肉眼型でOR 4.512、95%CI 1.124-18.11と、肉眼形態のみがKRASの活性型変異の有無、βカテニンの活性状態の有無と相関を示した。そこでこのβカテニンの活性化をさらに検討する為、βカテニン/APC-WNTシグナル経路の検討を行った。進行大腸癌で報告されるβカテニンの活性型変異とAPC遺伝子のLOHについて検討。本検討では、LSTにβカテニンの活性型変異はなく、APCのLOHでは、LST-NGはLST-Gに比して有意にLOHの頻度が多かった(60% vs 28%, p=0.030)。LSTはその形態形成にKRASとAPC遺伝子のLOHが重要な役割を担っている可能性が示唆され、発癌メカニズムを解明する上でも興味深い現象と推察された。
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