研究課題
クローン病ならびに潰瘍性大腸炎からなる炎症性腸疾患は、主に若年者に発症し、寛解、再燃を繰り返す腸管の炎症性疾患である。炎症性腸疾患患者は、近年急速に増加しているが、病因が不明で根治療法がないため、わが国では特定疾患(いわゆる難病)に指定されている。炎症性腸疾患の原因の一つとして、従来より、腸内細菌や食事成分などの抗原に対する免疫寛容(アナジー)の破綻が考えられてきたが、その機序は明らかではなかった。近年、T細胞のアナジー化においては、E3ユビキチン・リガーゼであるgene related to anergy in lymphocytes(GRAIL)、Itch、c-Cblなどの分子の発現が誘導され、T細胞シグナル伝達分子がユビキチン化を受けて消費されるため、T細胞の活性化が起こらないということが明らかとなった。本研究では、炎症性腸疾患患者および炎症性腸疾患モデルマウスにおけるアナジー関連分子(GRAIL,Itch,c-Cbl)の発現を解析した。まず、潰瘍性大腸炎患者の末梢血あるいは粘膜固有層のT細胞におけるアナジー関連分子の発現を調べ、健康者と比較したところ、寛解期の潰瘍性大腸炎患者の末梢血においては、活動期の潰瘍性患者や健常対象者と比較して有意にGRAILの発現が高く、GRAILが高値の患者では長期に寛解維持が得られた。また、GRAILの変動は治療効果と相関する傾向が確認された。さらに、炎症性腸疾患様の腸炎を発症するinterleukin(IL)-10ノックアウトマウスを用いてアナジー関連分子の発現を検討したところ、大腸炎を起こした局所の細胞ではGRAILをはじめとするアナジー関連分子の発現が有意に低かった。これらの研究成果はアナジー誘導による新たな炎症性腸疾患の開発への端緒となると考えられた。
すべて 2008 その他
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