研究概要 |
内視鏡検査を行っても逆流性食道炎を認めないにもかかわらず,胸やけなどの逆流症状がみられる非びらん性胃食道逆流症(NERD)において,逆流症状の出現が食道粘膜傷害の発生に抑制的に働いている可能性を明らかにするために,食道感受性と食道運動の観点から研究を行った。まず,ラットにおいて,酸逆流モデルと酸・十二指腸液逆流モデルを作成し,食道粘膜の炎症の指標としてIL-1β,食道の感受性の指標としてCGRP,サブスタンスP発現をみたところ,IL-1βの発現とサブスタンスPの発現には負の相関がみられ,食道の炎症が食道の感受性に何らかの影響を与えていることが明らかとなった。さらに,新生児期に腹腔内に多量にカプサイシンを投与することでCGRP欠損ラットを作成し,そのラットにおいて酸逆流モデルを作成し,食道感受性の低下によって酸によっておこる粘膜傷害が正常ラットに比して早期に形成される可能性を明らかにしており,今後その成果をまとめて英文誌に投稿予定である。 また,NERDの長期経過観察についての臨床研究を行い,NERD例の大半が5年後には胸やけ症状が消失しているが,5年後に逆流性食道炎例となっている例が約1割存在し,その頻度は全く胸やけ症状のない正常者の2倍であること,逆流性食道炎の約半数は5年後も逆流性食道炎例であるがその他の例においては食道粘膜傷害が消失することを明らかとし,英文誌に掲載されている。
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