microRNA(miR)が発癌や癌の悪性度に関与することが明らかになりつつあるが、食道扁平上皮癌(SCC)特異的な発現miRを同定し、Mcl-1発現制御との関与を明らかにすることを目的にした。ヒトSCC株とヒト不死化正常SC由来細胞から抽出したRNAを用い、miRNA arrayによりmiRNA発現の相違を網羅的に解析した。SCC株各種、Het1A、食道腺癌細胞株、胃腺癌株などからRNAを抽出し、有意に(2倍以上)発現変化を示したmiRNAをrealtime PCRにて定量した。Het1Aに比べ、OE21とTE10とで共通して有意に発現上昇していたmiRは205であった。STAT3-Mcl-1経路の負の制御因子SOCS3をターゲットとするmiRがmiR-205である。Pre-miR-205 (precursor)、Anti-miR-205(Inhibitor)をSCC細胞導入し、増殖能(cell count、MTT assay)、アポトーシス(TUNEL、DAPI staining)、浸潤能(マトリゲルでのmigration assay)、遊走能(wound healing assay)を検討した。Anti-miR-205、Pre-miR-205による機能解析では、増殖やアポトーシスに有意な影響は及ぼさなかったが、Pre-miR-205によりマトリゲル浸潤細胞数が有意に(p<0.01)減少した。wound healing assayの結果では、明らかな影響はみられなかった。一方、DNAメチル化とmiR発現のepigenetic制御をSCCで解明するため、SCC細胞にデオキシシチジン(5-aza)、トリコスタチンA(TSA)を作用させ、前後での発現変化をrealtime PCRで調べた。その中で、miR-10aは食道腺癌細胞に比べ、SCCで有意に発現の低下がみられた上に、5-aza添加で2倍、5-aza+TSAで約3倍発現が増加した。Pre-miR-29b導入によりMcl-1発現が低下した。
|