前年度の研究より、HO-1を誘導したマクロファージではIL-12p40の分泌が低下しており、この際に転写因子であるSTAT1のシグナルが抑制されている事が分かった。そこで前年度に樹立したHO-1発現RAW264.7細胞でリアルタイムPCRを行ったところ、IL-12p40の転写量は減少しておらず増加傾向であった。さらにIL-12p40の転写因子と報告されているIRF-8も同様に増加傾向であった。この結果より、STAT1シグナルはIL-12p40の転写ではなく、その後の分泌を制御している可能性が考えられた。 また、本年度はSTAT1欠損マウスを用いてIL-12の分泌やDSS実験腸炎の重症度を検討した。STAT1欠損マウスにチオグリコレート培地の腹腔内注射を行い、活性化マクロファージを集めた。この活性化腹腔マクロファージにLPSとIFN-γの刺激を加えてIL-12分泌量をELISAで測定すると、コントロールで平均460pg/mlであったがSTAT1欠損マウスでは平均3pg/mlまで著しく減少していた。次にマウスにDSS腸炎を誘発したところ、腸炎重症度の指標となる体重減少はSTAT1欠損マウスで有意に改善していた。また大腸組織を用いたリアルタイムPCRではSTAT1欠損マウスでIFN-γの転写量が有意に減少しており、IL-12によって誘導されるはずのTh1型腸炎が軽症化している事が確認できた。さらにH&E染色による病理学的検討でも軽症化している事が確認できた。 以上より、1)HO-1がIFN-γ/STAT1シグナル抑制を介してIL-12分泌を減少させること、2)STAT1によるIL-12分泌制御は機序不明ながらTh1型腸炎の発症に大きく関与していること、が合かった。今後は炎症性腸疾患への臨床応用が期待される。
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