2001年からこれまでGISTの薬物治療に加えて、イマチニブ・メシレートをはじめとする分子治療薬の臨床試験を行ってきた。また当センターにおいて実績が著しい超音波内視鏡下穿刺吸引生検法により確定診断を行ってきた経緯より多くの患者の臨床データーと検体の蓄積がある。今回、実際に採取して検体を用いて解析を開始したが、(1)超音波内視鏡下穿刺吸引生検法により採取された腫瘍組織は微量であることに加え、血液などの他の組織が多く含まれていること、(2)一部の患者で、当センターにおけるヒトゲノム・遺伝子解析倫理委員会で承認された臨床試験に対して、本人の同意がえられない場合が存在することが判明した。また、(3)パラフィン切片からの遺伝子中室抽出およびその遺伝子増幅を試みたが困難な症例が一部にあることが判明した。以上より、集積可能と見積もられていた患者数のうち遺伝子抽出が可能な検体が少なくなり、十分な検討が行なえないことを危惧し若干の患者集積の必要性があると判断した。本年度はさらに検体の集積を行いつつ、それらの検体を用いて良質なDNAの抽出を試みた。遺伝子抽出が可能であった症例については、既報の遺伝子変異であるc-kitおよびPDGFRaの遺伝子変異および発現解析を行った。一方、患者集積と同時に臨床情報の整理をおこない、c-kitおよびPDGFRaの遺伝子変異や臨床のパラメーターとGISTの経時的変化との相関に関して検討を行い、2008年1月に行われた米国臨床腫瘍学会・消化器癌シンポジウムで報告を行った。本年度は、c-kitおよびPDGFRaの解析に加え、DNAアレイを用いたエピジェネティックに制御されるがん関連遺伝子の解析を行うとともに、凍結組織よりRNAを抽出してcDNAアレイを用いて網羅的発現解析を行ない、細胞接着などの転移・浸潤に関する遺伝子群の発現について検討を加え、GISTの移転能に関する発現形式を明らかにする予定である。
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