研究課題
膵癌は消化器癌の中で最も予後の悪い癌のひとつであり、新しい診断法並びに治療法の開発が急務である。そこで、我々は膵癌幹細胞を標的とした骨髄由来細胞による遺伝子治療を行うことを最終目的に、膵癌幹細胞の同定と骨髄由来細胞をその特異的攻撃細胞として遺伝子を発現させるために基礎検討を行った。1)膵癌幹細胞同定のための検討最近、EMTが誘導されている細胞が癌幹細胞と同様の性質を持つことが報告された。そこで、我々は、BMP4投与によって膵癌細胞のEMTを誘導し、同時に発現上昇の認められた分子をmicroarrayにて検索した。その結果、今まで報告のみられなかったS100Pの発現誘導がみられた。siRNAにてS100Pの発現を抑制した膵癌細胞株Panc-1では、BMP4による細胞移動能亢進作用が消失したことから、S100PがBMP4の誘導するEMTに関与している可能性が示唆された。これらのことから、S100P発現細胞に膵癌幹細胞が多く含まれていることが推測された。2)骨髄由来細胞が癌あるいは癌周囲に動員されるか否かの検討マウスに対して放射線照射後にGFP発現グリーンマウス(大阪大学岡部教授より供与)から、骨髄移植を行った。移植骨髄細胞の定着を確認したのち、化学物質DMBAをマウス膵に注入し、経時的に膵を摘出し膵発癌過程を観察した。DMBA注入後、マウス膵には過形成病変が出現し、時間経過とともに癌病変が出現した。過形成や癌病変周囲にはGFPを発現する間質細胞が認められ、骨髄由来細胞が癌化細胞周囲に動員されている可能性が示唆された。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Cancer Sci 100
ページ: 103-110
Oncol Rep 19
ページ: 1185-90
Int J Cancer 122
ページ: 2707-2718