研究概要 |
本研究において我々は、(1)初代肝幹細胞を分離・培養し、これを利用して新規の細胞移植モデルをマウスにおいて確立すること、さらに、(2)マウス肝臓を大きくヒト肝細胞で置換しうる新規移植系を構築し、得られた「Humanized Liver」に対してC型肝炎ウイルス感染モデル動物の構築を行うこと、を目的として研究計画を遂行し、今年度の成果として下記を得た。 (a)研究代表者・分担者らはまず、高速セルソーターを用いて、Dlk^+CD45^-Ter119^-のマウス肝幹/前駆細胞が高濃度に純化された画分を得る手法を確立し、分化・増殖に関与することを予想していた遺伝子の解析を行った。この研究によって転写因子Prox-1が肝幹/前駆細胞の細胞周期を正に制御し、強制発現によって肝幹/前駆細胞の長期増殖が可能になることを見いだした(Hepatology, 2008)。同様に転写因子Sall4が胆管細胞への分化を促進することを見いだした(Gastroenterology, 2008)。 (b)初代肝幹細胞と肝幹細胞に増殖誘導をかけた細胞、分化誘導をかけた細胞を用いて、細胞移植を行いin vivo assayによって肝幹細胞の機能の変化を評価する系の構築を試みた。野生型成熟肝細胞を移植することで肝臓の約30-50%がドナー細胞によって置換される移植モデルの構築に成功した(unpublished data)。 (c)さらにC型肝炎ウイルス感染動物に対する治療モデル系の構築を行った。HCV構造蛋白をinducibleに発現できるマウスに対して、HCVレプリコンに増殖抑制効果があることを確認したshRNA配列を発現させたところ、このshRNA配列がin vivoでもHCV蛋白の発現を抑制できることを示し(J Gastroenterol Hepatol, 2008)、本研究計画の目的は概ね達成されたものと考えられた。一方で将来的な検討課題として、より効率の高い移植モデルを開発して、患者血清検体を直接解析できる系の開発が期待される。
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