研究概要 |
本研究では肝癌患者における抗腫瘍免疫を効率的かつ強力に誘導できる手法を確立し,肝細胞癌治療後の再発制御を目的とした癌免疫療法の開発を行った。本年度の研究では以下に示す成果が得られた。 1)肝癌患者における抗腫瘍免疫反応を増強させる治療方法の同定:現在肝癌の標準的治療として行われている外科的切除・ラジオ波凝固療法・肝動脈塞栓療法・化学療法において治療前後における抗腫瘍免疫反応の変化を検討し,抗腫瘍免疫を増強させるのに適した治療方法がラジオ波凝固療法と肝動脈塞栓療法であることを同定した。また,本治療方法において患者末梢血から誘導した樹状細胞を同時に投与することにより,こうした抗腫瘍効果をさらに増強できることを確認した。 2)動物モデルにおける肝癌特異抗原を用いた抗腫瘍免疫反応の誘導方法の確立:HLA-A24をもつマウス動物モデルを用いて,これまでに我々が確立した肝癌特異的な抗原由来人工ペプチドによる免疫療法を行い,抗腫瘍免疫を誘導できる手法の開発を試み,同手法の安全性と有効性を確認した。 研究成果の意義と重要性:肝癌治療後に抗腫瘍免疫反応を増強させる手法を同定したことにより,肝癌治療後再発制御を目的とする免疫治療開発の一歩となる可能性が示唆された。今後は本手法によって誘導された抗腫瘍効果の増強と治療効果との関連を検討し,抗腫瘍免疫を増強することが肝癌の局所治療効果や治療後再発の抑制に寄与するかどうかを検証する必要がある。また上記2)の成果により,同ペプチドのヒトへの応用の基礎研究結果が得られたと考えられる。本成果に基づいた,より強力な抗腫瘍免疫を誘導できる治療方法の開発とヒトへの応用研究を行っていく予定である。
|