本研究では肝癌患者における抗腫瘍免疫を効率的かつ強力に誘導できる手法を確立し、肝癌治療後の再発制御を目的とした癌免疫療法の開発を行った。本年度の研究では以下に示す成果が得られた。1)肝癌動物モデルにおける肝癌治療後の抗腫瘍免疫増強・維持をもたらす癌免疫療法の開発:マウス肝癌細胞を皮下に移植し、一定の増殖が得られた後、これをラジオ波焼灼療法にて治療できる動物モデルを確立した。このモデルを用いて、同治療を行うと、反対側に移植した未治療の肝癌が縮小するという知見が得られた。各種免疫学的解析により、同治療法が抗腫瘍免疫を誘導していることが明らかになった。また動物モデルにおいて樹状細胞、腫瘍抗原由来ペプチド、各種ケモカインの投与により、肝癌治療において誘導された抗腫瘍免疫をさらに増強・維持させることのできる手法を開発した。2)肝癌患者における肝癌治療後の抗腫瘍免疫増強・維持をもたらす癌免疫療法の開発:上記動物モデルにおける知見を踏まえ、同様の解析をラジオ波焼灼療法施行肝癌患者で行ったところ、ヒトにおいても同治療によって肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫が誘導できることを明らかにした。同治療を行った際に誘導できる抗腫瘍免疫反応の頻度は他の肝癌治療のものと比べて、高率であった。さらに同治療によって抗腫瘍免疫を誘導した際に肝癌患者リンパ球が認識する腫瘍抗原やそのT細胞エピトープを同定した。研究成果の意義と重要性:これらの結果は今後の肝癌免疫療法の開発に有用な情報となると考えられる。現在、上記検討によって得られた手法と抗原エピトープを含む人工ペプチドを用いて、肝癌患者の免疫療法の臨床試験を準備している。
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