研究概要 |
●本研究の目的はC型肝炎ウイルス(HCV)増殖制御因子として、我々が最近明らかにしたHCV非構造蛋白NS3ヘリカーゼ・ドメインに着目し、同領域によるHCV増殖制御機構の解明を通して、新たな抗HCV治療戦略の基盤を形成することにある。 ●申請時において、我々は高増殖HCV株HCV-Nと低増殖HCV株HC-J4を用いた、HCVゲノム領域にわたる相同組換えによる検討で、NS3ヘリカーゼ領域、さらにNS5Bから5'UTR領域の両者がHCV-NとHC-J4の細胞内増殖力を決定づける重要な領域であることを明らかにしていた。今年度、我々はさらにヘリカーゼ領域の詳細なmappingを行い、同領域における6アミノ酸に増殖を決定する部位が絞られることを明らかにした。すなわち、これら6つのアミノ酸をそれぞれ一つずつ置換すると、様々な程度にHCV増殖活性は変化し、最終的にこれらの領域が全体として、HCV増殖を規定しているものと考えられた。一方、タンパク質高次構造モデルにおいて、この領域はヘリカーゼ蛋白の酵素活性中心部位ではなく、蛋白表面にmapされたことから、酵素活性の変化よりも他の蛋白との相互作用において、HCVの増殖を制御するものと推定された。 ●宿主の自然免疫におけるヘリカーゼ領域の関与を明らかにするため、低増殖株HC-J4由来、および高増殖株HCV-N由来、各々のNS3発現プラスミドを作成し、RIG-I/TLR3自然免疫阻害活性についてレポーターアッセイによって検討を行った。その結果、NS3蛋白構造によってRIG-Iシグナル阻害程度が異なること、さらに阻害の程度と細胞内HCV増殖能が関連することを明らかにした。すなわち、HC-J4由来のNS3蛋白をRIG-I,MDA-5,IPS-1と共発現し、ISRE活性をアウトプットとしてRIG-I/TLR3シグナル阻害能を検討したところ、HCV-N株由来のNS3/4A蛋白による阻害能と比べて有意に弱く、両HCV株の細胞内増殖能を規定する因子としてのRIG-I/TLR3シグナルの重要性が明らかとなった。
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