本年度はB型肝炎ウイルス(HBV)のRNA遺伝子量測定系の基礎検討を行った。血清検体200μ1からキットを用いてウイルス核酸を抽出した。RNA分解酵素を含まないDNA分解酵素で処理後、HBVのS遺伝子領域に設定したプライマーで逆転写およびリアルタイムPCR法による定量的測定を行った。これにより、2.6logコピー/mlの感度でHBV RNAを定量的に測定することが可能になった。特異性に関しては、DNA分解酵素で処理後、逆転写を行わずにアルタイムPCRを行った。この結果、核酸の増幅はなく、今回の条件でHBV RNA量を特異的に測定していることが示された。 今回、HBV DNA量とRNA量を同時に測定する方法も検討した。すなわち、上記RNA量特異的測定法において、DNA分解酵素での処理を省いたものである。このHBV D-RNA量は、核酸アナログ薬非投与下ではDNA量と相関し、投与下ではRNA量と相関した。本法はDNA分解酵素での処理過程がない分、簡便で安定性が良好であった。今回はHBV RNA量とHBV D-RNA量の両方の有用性が示された。 HBVコア関連抗原量はHBV遺伝子のPre-C・C遺伝子から転写・翻訳されるペプチドを全て測定する系である。HBVコア関連抗原は、核酸アナログ薬非投与下ではDNA量と相関し、投与下ではRNA量と相関した。この点でHBV D-ANA量と類似しており、今後はHBV核酸量と同時に測定し比較検討を行う予定である。 今後の検討で使用する臨床検体については、倫理委員会の承認を受け、患者から同意を取得し、B型慢性肝炎の治療例についてシリーズ血清を採取、保存した。
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