研究概要 |
上皮細胞に発現するcAMP依存性のイオンチャネルCFTR(cystic fibrosis transmembraneconductance regulator)の遺伝子多型と慢性膵炎との関連を解明するため、慢性膵炎患者(69人)、健常人(48人)を対象にCFTR遺伝子多型の解析を行った。翻訳領域の遺伝子多型の解析は既に終了しているため、転写調節に影響を及ぼすと推定される非翻訳領域(プロモーター領域を含む翻訳領域の上流約2kb)の遺伝子解析を行った。その結果、これまでに世界でも報告のない変異-1523G/Aが患者群と健常人で1例づつ、-790delTは患者群にのみ3例見つかった。その他、-895T/G、125G/Cの遺伝子多型が見つかった。 -895T/Gのアレル頻度は健常群で46.9%、患者群で50.7%、125G/Cのアレル頻度は健常群で6.3%、患者群で5.2%であった。また表現型の解析として、慢性膵炎患者(48人)、健常人(40人)を対象に指先汗クロライド試験法(Naruse,2004)を用いで汗のCl^-濃度を測定した,その結果、アルコール性慢性膵炎患者のうち17例(47.2%)が基準値(60mmol/l)を超える高値を示した。特発性慢性膵炎患者で基準値を超えた症例は3例(25.0%)、健常群では7例(17.5%)であった。現在、翻訳領域および非翻訳領域の遺伝子多型と汗のCl^-濃度との相関を検討中である。また、非翻訳領域の遺伝子多型が転写量に及ぼす影響を検討するために、患者および健常人の鼻の粘膜よりRNAを抽出した。現在、リアルタイムPCR法によりCFTR遺伝子の発現量を定量するため、最適なプライマーの設計を行っているところである。
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