研究概要 |
1.ヒト肝細胞癌に対する疎水化γ-PGAナノ樹状細胞によるCTL誘導能の基礎的検討 ヒト末梢血より樹状細胞を誘導し、γ-PGAナノ粒子のヒト樹状細胞への影響を解析した。γ-PGAの添加によりヒト樹状細胞上に発現するCD80やCD86、CD83分子の発現が上昇することから、マウス樹状細胞にて過去に報告されたのと同様に、ヒト樹状細胞においてもγ-PGAナノ粒子にて樹状細胞の成熟化が起こることを明らかにした。また未熟樹状細胞にγ-PGAナノ粒子添加Ovalbumin(OVA)抗原を添加し、その取り込みをフローサイトメトリーにて解析した。その結果γ-PGAナノ粒子に添加によりOVAの樹状細胞への取り込みが増大することを明らかにした。本研究結果は疎水化γ-PGAナノ粒子のヒト樹状細胞に対する免疫学的修飾を示す初めての結果であり、将来の臨床応用へ向けて非常に重要な結果であると考えられる。 2.マウス肝腫瘍に対する疎水化γ-PGAナノ粒子-癌抗原由来ペプチドワクチンの抗腫瘍効果の基礎的検討 マウス大腸癌MC38の肝内投与による肝腫瘍に対する疎水化γ-PGAナノ粒子-癌抗原ペプチドEphA2ワクチンによる抗腫瘍効果の基礎的検討を行っている。本腫瘍系は我々の既報(Yamaguchi S,Tatsumi T, et al.Cancer2007)の腫瘍系である。EphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンを行うと、EphA2特異的CTLの誘導が、既存のアジュバントを用いたCFA-EphA2ペプチドワクチンより効率よくおこる事を明らかにした。またMC38肝腫瘍に対しEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンを行うと、肝腫瘍は排除され、コントロール治療群に比して有意に肝重量が低いということも明らかにしている。本研究結果は、既存の治療法の適応外となる肝癌に対する新たな治療法を示唆する結果であり、その臨床的意義は高いと考えられる。
|