研究概要 |
1.マウス肝腫瘍に対する疎水化γ-PGAナノ粒子-癌抗原由来EphA2ペプチドワクチンの抗腫瘍効果の基礎的検討 マウス大腸癌MC38の肝内投与による肝腫瘍に対する疎水化γ-PGAナノ粒子-癌抗原ペプチドEphA2ワクチンによる抗腫瘍効果の基礎的検討を行った。本検討で用いた腫瘍系は我々の既報(Yamaguchi S, Tatsumi T, et al. Cancer2007)のEphA2を発現しているMC38腫瘍系を用いた。EphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンを行うと、EphA2特異的CTLの誘導を認め、既存の強力なアジュバントを用いたCFA-EphA2ペプチドワクチンより効率よくCTLが誘導される事を、ELISPOT法を用いて明らかにした。MC38肝腫瘍に対しEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンを行うと、肝腫瘍は排除され、コントロール治療群に比して有意に肝重量が低かった。またEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンはCFAによるワクチンよりも抗腫瘍効果が高いことが明らかになった。同系でEphA2が発現していないBL6肝腫瘍はEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンによる抗腫瘍効果を認めなかったことから、EphA2を発現しているMC38特異的な抗腫瘍効果であることが明らかとなった。このEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンによる抗腫瘍効果の主なエフェクター細胞はCD8陽性CTLであり、NK細胞の関与はなかった。またEphA2-γ-PGAナノ粒子ワクチンの安全性を検討したところ、CFAワクチンでは腎障害は認めなかったが著明な肝障害を認めたのに対して、EphA2-γ-PGAワクチンは肝障害、腎障害ともに認めす、安全性が高いことが示された。本研究結果は、既存の治療法の適応外となる肝癌に対する新たな肝癌免疫治療を示唆する結果であり、将来的な臨床応用が期待され、その臨床的意義は高いと考えられる。
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