研究概要 |
生体肝移植時の摘出肝よりこれまで当研究室で樹立した胆管上皮細胞株(PBC株、対照株)においてCD40、HLADRの発現はTLRリガンド3の刺激で亢進、TLRリガンド2,4,5の刺激では変化なかった。またリガンド刺激前後でPBCと対照においても有意差を認めなかった。次に胆管上皮細胞株1株を例にとりプロテインアレイでTLRリガンド刺激前後でのサイトカイン、ケモカインの産生を確認した結果、GCP-2、ENA-78、GRO-a、IL-8の産生を刺激前から認め、TLRリガンド3で激した場合でのみRANTES、MIP-1a、MTP-1b、IP-10の産生亢進を認めた。次に上記憶常的に産生されるケモカイン4種とリガンド刺激で産生されるもの4種についてPBCと対照で差をみとめるかELISAで検討したが有意差を認めなかった。以上よりPBCでの標的細胞である短観上皮細胞はTLRリガンド3刺激に感受性はあるもののPBCで特に有意に動く細胞表面マーカーやサイトカイン、ケモカインは認めなかった。次に胆管上皮細胞株を樹立する際に生体肝移植時の摘出肝より同時に採取し凍結保存していた肝臓浸潤リンパ球と同一症例より樹立した胆管上皮細胞株を共培養後、胆管上皮細胞株の細胞表面マーカーやサイトカイン、ケモカインの変生を再度検討した。その結果PBCでは対照と比較して有意にCD40、HLA DRの発現亢進を認め、TLRリガンド3で刺激した場合のRANTES、MIP-1a、MIP-1b、IP-10の産生亢進を認めた。さらにはこれらのケモカインを用いて肝臓浸潤リンパ球の遊走能を検討した結果、PBCでは対照と比較して有意に遊走能が先進していた。以上の結果より、胆管上皮細胞はPBCの場合、自己リンパ球から刺激をうけてより標的細胞としての特性を獲得し、かつ攻撃細胞を引き寄せる働きを持つことが明らかとなった。
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