NASHの臨床検体数が十分でなく、少数例での免疫染色の解釈も困難であったことから、2009年度は新たにアルコール性肝障害モデル、急性肝不全モデルでの実験的研究を追加し、肝障害におけるTLR4の意義を検討することとした。(発表は次年度となる) 1) アルコール性肝障害モデル ラットに5%エタノール含有Lieber-DeCarli液体飼料および同カロリー含有コントロール飼料を16週間投与し、アルコール性肝障害モデルラットとコントロールラットを作成した。これらのモデルをサイトカイン産生調節薬Y-40138経口投与(10mg/kg)群と非投与群に分け、肝障害度、サイトカイン産生、TLR4動態について比較検討した。エタノール投与により血清ALT、中性脂肪、TNF-α、IFN-γ、全肝TNF-α、IFN-γは増加し、real-time PCR法で肝内TNF-α、IFN-γ、TLR4 mRNA発現が有意に増強していたが、Y-40138投与によりこれらは抑制される傾向にあった。Oil Red-0染色、Sirius-Red染色ではエタノール群で濃染の増強を認め、治療群では軽減した。肝組織のTNF-α免疫染色ではエタノール投与により濃染が増強し、Y-40138投与ではこれが軽減した。一方、全肝IL-10はエタノール群で上昇し、Y-40138投与群でさらに上昇した。以上、TLR4/TNF-α系を抑制するY-40138の有効性が証明された。 2) 急性肝不全モデル 致死的急性肝不全モデルであるガラクトサミン(GalN)+LPS投与ラットにTLR4アンタゴニストE5564を投与し、肝障害改善効果と救命効果について検討した。GalN+LPS投与3時間後の血清AST、ALTの著増はE5564投与で軽減し、肝組織変化も軽度にとどまった。GalN+LPS投与24時間後の生存率はE5564投与で8%から43%と著明に改善した。
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