研究概要 |
肝細胞の増殖を増殖あるいは抑制する因子を劇症肝炎患者血漿中に見いだすことを目的として、平成19年度は(1)生物学的人工肝臓(BAL)の確立、(2)肝前駆細胞株の評価を行った。 成績(1)ラジアルフロー型バイオリアクターにハイドロキシアパタイトを支持体としてヒト肝癌細胞株FLC4を立体培養してBALとした.1.電子顕微鏡による細胞形態:培養細胞は強固な細胞間接着をもって密に配列し、一部は微絨毛の形成を認めたが、毛細胆管形成は明らかではなかった.2.細胞数:酸素消費、ブドウ糖消費ともに細胞播種4日-3週間より有意の上昇を認め、4-8週で平衡に達した.3.肝特異的遺伝子発現:アルブミンmRNAの発現を認めたが、AFP、HNF-4、OTC、フィブリノゲンの遺伝子発現は検出されなかった.4.幹細胞機能の発現:アルブミンおよび尿素の分泌を認めた.(2)C57/BL6マウスからEpCAMを表面マーカーとして分離されたLiver stem/progenitor cell lineを東京大学宮島篤教授から供与を受け、マウス肝前駆細胞としてその遺伝子発現を同系マウスの成熟幹細胞と比較した.この細胞は細胞骨格蛋白としてCK18とよびCK19ともに発現し、また、アルブミン、AFPもに発現していた.また、Glucose-6-phosphatase,Matrixmetallopeptidase-9,Tyrosinaminotransferaseの発現は認められず、遺伝子発現上、肝前駆細胞としての性質を有していた.現在、劇症肝炎患者血漿およびBALによる浄化後の血漿の細胞増殖に対する影響を比較・検討中である.
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