研究概要 |
C型慢性肝炎では男性に比して女性で肝炎活動性が軽微な症例が多いなど,肝病態には性差が認められる。肝炎はTh1系免疫応答により発症するが,オステオポンチンはその開始に必須のサイトカインであり,肝細胞にその発現が見られる。従って,肝炎活動性は肝細胞の発現するオシテオポンチンによって調節されていると推定され,これが肝病態における性差も規定している可能性がある。我々は,オステオポンチン遺伝子プロモーター領域の塩基配列を解析し,ほぼ100%の連鎖不平衡を呈するnt-155,-616,-1,748の3SNPsと,これと独立したnt-443のSNPを見出した。これらSNPsに関して,調節機構を解明するためにPC解析したところ,nt-443はalleleがTの場合にCdxAが,nt-155は何れのalleleでもY染色体にコードされるSRYが,deletion mutationの場合はFoxD3が結合することが明らかになった。そこで,これらSNPsの結合領域を含む30塩基からなるoligonucleotideをalleleごとに合成し,ビオチン標識した。一方,雄性のHep細胞,雌性のHela細胞にdexamethasoneを添加した後に核蛋白質を抽出し,雄性および雌性の活性化核蛋白抽出分画を作成した。標識oligonucleotideと活性化核蛋白抽出分画の混合液を電気泳動してgel-shiftアッサイを行ったところ,HepG2細胞の核抽出物を用いた検討ではCdxA,SRY,FoxD3と,Hela細胞での場合にはCdxA,FoxD3とologonucleotideの結合を示すビオチンシグナルが検出され,オステオポンチンの発現調節に性差があることが確認された。また,nt-443に関しては異なるalleleの非標識oligonucleotideを混合液に過剰に添加する競合gel-shiftアッサイを実施し,alleleがTの場合に結合性が高度であることを証明した。
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