研究概要 |
アルコール性肝障害ならびに腸管虚血再灌流惹起性肝障害の進展には、共に酸素ストレスや腸管由来のエンドトキシンの増加、それに伴う内皮細胞上の接着因子を介した白血球の膠着が関与することが知られている。今回、ラットを用い低用量エタノールの腸管虚血再灌流惹起性肝障害に対する影響について検討した。Wistar系雄性ラットに、生理食塩水、1g/kg(低用量)あるいは4g/kg(高用量)エタノールを胃管より投与した。その後上腸間膜動脈を結紮し、30分後虚血を解除(再灌流)し評価したところ、生理食塩水投与と比較し低用量エタノールは腸管虚血再灌流による肝微小循環障害、肝障害をALT値、組織とも改善し、高用量では増悪した。腸管粘膜透過性は差を認めなかったが、TNF-αの血中濃度は低用量では減少し、高用量では増加した。このことより、腸管虚血再灌流惹起性肝障害において、低用量エタノールはTNF-α産生を抑制し肝微小循環障害、肝障害を抑制するIschemic preconditioning(IP)効果が示された。IPにはAdenosineが関与することが知られており、これらのモデルにそれぞれadenosine A1,A2受容体拮抗薬を経門脈的に投与したところ、A2受容体拮抗薬にて低用量群の肝微小循環障害、ならびに肝障害が増悪し、組織にても炎症細胞浸潤増加を認め増悪がみられた。低用量エタノールによるIP効果にはA2受容体を介した経路の関与が示唆された。これらの結果は肝における適正飲酒の効果につき機序解明の一端となると思われる。またエタノール35%含有液体飼料(Lieber diet)を6週間feeding後腸管虚血再灌流施行し、肝微小循環障害、肝障害を評価したところ、コントロール食のラットと比較し増悪を認めた。現在、液体資料のエタノール濃度5%ずつ振り分けて慢性エタノール投与にて肝における適正飲酒モデル作成につき研究継続中である。
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