研究概要 |
【背景】サイトカインなどによる様々な骨髄への造血刺激により、末梢血幹細胞が増加する事はすでに知られている。この事から、瀉血による骨髄造血刺激においても末梢血幹細胞が増加すると想定される。しかし現在までに瀉血血液中に肝細胞分化へ可能な細胞が存在しているという報告はない。一方で、近年、C型慢性肝炎患者対する瀉血療法の有用性が報告されており、瀉血治療症例は今後増加すると考えられる。 【目的】瀉血治療を行っているC型慢性肝炎症例の末梢血中に、肝不全治療に使用可能な細胞集団が存在する事を証明する。 【方法】瀉血治療を行っているC型活動性慢性肝炎で瀉血血液の本研究への使用に同意を得られた症例を対象とした。瀉血血液は密度勾配遠心法により単核球を分離し実験に使用した。分離した細胞を、間葉系幹細胞培地を用い約2週間培養し、コロニーの形態を比較した。その後、Dcxamethasone, hFGF1, hFGF4, hHGFを用い、肝細胞への分化誘導を1週間行い、real Time PCRにより内胚葉及び、肝細胞特異的遺伝子の発現を検討した。 【成績】血中ヘモグロビン値正常例では、コロニー形成は殆ど見られなかったが、血中ヘモグロビン値が20%以上低下した例では未分化な形態のコロニー形成を認めた。一週間の分化誘導により、GATA4, HNF4a, HNF3bなどの内胚葉系細胞で発現する転写因子で15〜50倍、AFP, ALB, AAT, TAT, G6Pなどの肝細胞特異的遺伝子で15〜900倍のmRNAレベルの発現上昇を認めた。 【結論】瀉血血液内には、肝細胞への分化能を有する細胞分画が存在しており、この細胞は貧血による骨髄刺激により増加する。これまで廃棄されてきた血液を再利用する事により、細胞治療による安価な肝不全治療法が開発できる可能性がある。
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