【背景】近年、C型慢性肝炎患者に対する潟血療法の有用性が報告されており、保険適応も認可された。このため、潟血治療症例は今後増加すると考えられる。潟血による骨髄造血刺激によって末梢血幹細胞が増加すると想定されるが、現在までに潟血血液中に肝細胞分化へ可能な細胞が存在しているという報告はない。 【目的】潟血治療を行っているC型慢性肝炎症例の末梢血中に、肝不全治療に使用可能な細胞集団が存在する事を証明する。 【方法】潟血治療を行っているC型活動性慢性肝炎で本研究への参加に同意を得られた症例を対象とした。我々は昨年、潟血血液中の単核球を肝細胞へ分化誘導できる事を確認している。本年は、これらの細胞が長期保存後も使用可能である事を確かめるため、-80℃にて約一年間凍結保存をした後、実験に使用した。長期保存した細胞を用いて、分化誘導を行い、real Time PCRにより内胚葉及び、肝細胞特異的遺伝子の発現を検討した。また、末梢血幹細胞のマーカーであるCD34陽性細胞の免疫染色を行った。 【成績】長期保存後も末梢血単核球は保存前と同様に増殖し、分化誘導可能であった。また、潟血によって血中Hb値の低下した症例に末梢血中にCD34陽性細胞が存在していた。 【結論】潟血血液内には、肝細胞への分化能を有する細胞分画が存在しており、この細胞は少なくとも一年間の冷凍保存が可能であった。これまで廃棄されてきた血液を再利用する事により、細胞治療による安価な肝不全治療法が開発できる可能性がある。
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